第13章 encounter〜出会い〜
【和也】
雅紀が連れて来た翔っていう奴…
俺たちがたむろすこんな場所には
到底不似合いな感じのお坊ちゃんで…
どうしても隠せない育ちの良さ…
雅紀とは真逆の人生を歩いてきたであろう人。
だから雅紀は、惹かれるのかもしれない。
雅紀は気付いてないかもしれないけど。
翔は雅紀にないものを持ってるから……
Jが翔に興味を持った。
女も男も、適当に遊んでるような奴にしか、
手を出さなかったのに…
翔はどう見ても遊んでない。
真面目な大学生を、絵に描いたような…
俺がJに出会ったのは、
夜明けの公園だった。
バイト上がりでくたくたの俺は、帰り道を急いでいた。
コンビニで朝飯のためのアンパンと牛乳を買って、公園の側を通りかかった。
その時、ベンチにひとりで座っていたのがJだった。
通り過ぎようとした俺は、仔猫の鳴き声に気が付いた。
どうやらベンチの人が仔猫と話しているようで…
「おまえ、行くとこないのか?」
ミーミー
「腹減ってんの~?」
ミーミー
「悪いな、何も食うもん持ってないんだよ」
ミーミー
「そんな鳴くなって」
ミーミー
「……鳴くなよ…」
気が付いたら、その場に駆け寄って
コンビニで買った牛乳を、
手のひらにあけて仔猫に飲ませていた。
急に現れた俺に、驚いていた彼は、
美味しそうに牛乳を飲む仔猫を見て、
「ありがとな…」
と言った。
その時俺は初めてベンチに座る人を見た。
今まで見たことも無いような綺麗な青年で、
パープルの瞳は、吸い込まれそうなほどに
悲しげだった。
それがJだった。
そんな奇妙な出会いのその後、
俺は自分の部屋で彼と抱き合っていた。
会ってすぐ…とかさ。
今でも信じられないけどね……