第13章 encounter〜出会い〜
【翔】
本当にびっくりした。
潤が…俺のこと知らない振りして、
俺の知らない世界にいた…
本当にそう思った。
だけど、Jの俺を見る目は、
知らない人を見る目だった。
深いパープルの瞳も、
潤の綺麗な漆黒のものとは違うし。
俺を見ても、1ミリも同様を見せなかった。
全く同じ顔だけど、
俺の知ってる潤は、あんな威圧的な雰囲気とは程遠い……
俺は、潤に電話を掛けた。
でも、聴こえてきたのは無機質なテープの音声……
窓から、隣の家の二階を見ると、
智くんの部屋は灯りがもれている。
俺は、最近はかけることもなくなった番号を呼び出した。
……………
『……翔くん?』
「あ、智くん…ごめんね、こんな時間に…もしかして寝てた?」
『起きてたよ?…どうかしたの?』
「あのさ、潤って、いる?」
『………いないよ…』
いない……?どこ行ったんだよ?
………もしかして……
『バイト。遅くなるから、そのまま泊まるって言ってたけど。』
バイト?
それで電話の電源、入ってなかったのか…?
……でも………
『何?潤に急用?』
「あ、いや、いいんだ…」
『………』
「ごめんね、こんな時間に…
智くん、元気だった?」
『……うん…翔くんは?』
俺たちは、いつからこんなに
よそよそしくなってしまったんだろう?
小さい頃は、毎日3人で一緒に遊んでいたのに。
兄弟のない俺にとって、
潤と智くんは、本当の兄弟以上の関係だったのに……
その関係を壊してしまったのは、
俺…
もう、あの頃には戻れない…
『しょうくん』
『さとしくん』
無邪気だった…あの頃には、
もう……
『翔くん?』
「あ、ごめんね、じゃ、また」
『うん…またね…』
赤いボタンをタップすると
俺と智くんは簡単に切れた…