第13章 encounter〜出会い〜
【雅紀】
翔を送り届けて、
俺はダッシュでJのいる奥のVIP roomを目指した。
ドアの前で、息を整えてから、ドアをノックした。
程なくして、ロックが解除され、
Jが顔を出した。
「もう帰ってきたの?早いね…入れよ」
彼に招かれるままに部屋の中に入ると、
大きなソファーの上にニノがいた。
肌蹴て身体に纏わりついた服が、
素っ裸よりも寧ろ、いやらしく卑猥に見えた。
「お前も仲間に入るでしょ?」
薄く笑うJに、そのつもりで息せき切って走って帰ったはずの俺は、
「まあ、後で、いいや…」
余裕の振りして、少し離れたソファーに腰を下ろした。
「ねえ~、J…早くぅ~」
ニノが甘えた声を出して彼を呼ぶと、
Jはニノの元へ戻って行った。
………そう…これが俺たちの日常だった…
酔狂な戯れも、歪な関係も、
他人が知ったら眉を潜めるような行為も、
俺たちにとっては関係のないこと…
その時…その一瞬が楽しけりゃ、それでいい。
快楽だけを貪る様な関係も、
翔のような表の世界の友達には、
『恋人』なのか『友達』なのか…
はたまたそのどちらでもないのか?
説明のできない関係が、俺たちの全てだった。
そう……
その瞬間までは…
Jに突かれて、甲高い喘ぎ声を我慢することもしないニノと、どこか冷めた顔を崩すことなく行為に興じるJを…
ぼんやりと一枚の絵画を見ているような気持ちで眺めていた…
氷の融けたハイボールが、
俺の喉を通り過ぎた時…
セックスを終えたJが、
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、
そのキャップを捻りながら
静かに言ったんだ。
「今度さ、さっきのやつ、ここに呼びたい」
ニノは俯せのまま、ピクリとも動かない。
Jは、いつになく優しい笑顔で俺を見ていた。