第13章 encounter〜出会い〜
「あ、そっか…いいよ~、子どもじゃないんだから!一人で帰れるから…」
俺は精一杯の笑顔で雅紀に背を向けようとした。
「ダメだよ!危ないから…」
「危ないって…平気…」
「翔、この辺、変な輩もいるんんだ…それに…」
それに……??
「駅まで送れって…」
「誰が?」
「……J、が…」
Jが??
Jが、俺を送れって?
「だからさ、行こう」
雅紀に手を引かれて、俺は店を出た。
……確かに…
ほんの小一時間程しか経っていないのに、
店のある界隈は、
おかしな連中が、何組もたむろしていた。
「渋谷、だよな~?ここ…」
素直な疑問を口にすると、
「ここら辺は、遅くなると、
そういう目的のヤツが集まって来るんだ…」
そういう、目的…って…?
顔を背けたまま、雅紀は俺の隣に並んで、
小声で言った。
「一夜限りの関係…って言えば、分かるだろ?」
「あ~…」
「しかも、男同士のさ…」
……そう言う事なんだ…
俺だって鈍いけど、気付いちゃいたさ。
俺を見る、ねっとりした視線……
それって…
「翔ってさ、ソッチの筋の人には堪らない感じなんだよ〜…自分じゃ、分からないだろうけど。」
堪らない……?
堪らないってなんだよ〜?
俺に、男の恋人がいるって、
見ただけで分かるってこと…?
「そのベビーフェイスが、ヤバイのかな?」
雅紀はそう言って笑った。
「ベビーフェイスって…顔かよ(-.-)」
唇を尖らせた俺に、雅紀は、
「今日はホントにごめんね〜、
この埋め合わせは、絶対するから!」
と、両手を合わせた。
渋谷駅から電車に乗った俺は、
スマホの中にあった、潤の写メを出した。
潤は、屈託のない笑顔を俺に向けている……
潤……
見れば見るほど、潤とJは同じに見えた。