第13章 encounter〜出会い〜
その場は、雅紀を加え、
また何事もなかったかのように、
ビートの波に包まれていく。
身体の芯を揺さぶる音楽…
人々の笑い声…
煙草と酒の匂い……
新顔の俺のことなんか、
そんなに気にするヤツもいない……
一時の娯楽のみを求めて集まってくる奴等には、どうでもいいことには、興味もないんだ。
俺はまた、雅紀の向こう側、
ソファーに深く座る『J』という男を、
そっと見つめた。
「…じゅん……じゃ、ないんだ…」
そう呟いた声は、誰にも届くことなく消えた。
俺を見ても、顔色ひとつ変えないで、
『J』は知らないものを見るような目で、
俺を見ていた。
同じ顔、なのに……
『J』は……潤じゃない…
この世の中に、こんなに似ている人がいるなんて…
『J』から目が離せない俺に、
前にいた女の子が声を掛けて来た。
「ねえ、君、カッコいいよね?一緒に踊ろうよ!」
「えっ?あ、でも…」
「ほら、行こう♪」
強い香水の香りが鼻を突く。
俺は、知らない女の子に手を引かれフロアに出た。
『一緒に踊ろうよ』
大きな目が俺にそう言っている。
まあ、こんなとこに来て座ってるだけっていうのも何だしね…
俺は、彼女に合わせる様に身体を揺らした。
『J』って……
本当に他人の空似なんだろうか?
あんなに似てる…いや、もう同じ顔だよな…
そんな人間が、この世にいるなんて…
でも…
雰囲気は全く違う。
同じのは顔だけ…
背も…同じくらいなのかな?
座ってるから分かんないけど…
その時、女の子が、俺に身体を擦り寄せて来た。
大きな胸が俺に当たる…
「あのさ…」
「ねえ。今夜いいとこ行かない?二人で」
「え…あの」
俺の言葉を遮るように、
彼女の唇が、俺にの重なった。