第12章 irony of fate 〜運命の悪戯〜
「今夜はここまでね?続きはまた今度…」
「あ…う、うん…」
「そんな残念そうな顔すんなって!
次はお前のバージン、俺がもらうから♪」
「バッ、バージン??」
「だって、経験ないでしょ?…こっちは?」
そう言いながら、お尻をスルッと撫でられて、
ビックリした俺は、思わず変な声が出た。
それを可笑しそうに、Jは肩を揺らして笑った。
それから俺は、時間が空けば店に行くようになった。
Jとは、付き合うと言っても、外で会うようなことはなくて、もっぱら待ち合わせるのはいつものclub。
その後、二人で道玄坂のホテルに行くようになった。
もう俺は、Jに夢中だった。
何をしていても、会えない時間も、
Jが頭の中にいっぱいで…
取り巻きの中にいる女の子とも、そういう関係があるって、みんな噂していたし、それっぽく振る舞う子もいた。
しかも何人も…
気になった…
でも、どうしても聞けなかったんだ。
嫉妬深いって思われるのも嫌だし、
もしもJが、当たり前のように認めて、
『お前ひとりだって誰が言ったの?』
何て言われてしまうんじゃないかと…
そう思うと、怖くて……
そんな時出逢ったのがニノだった。
Jと、珍しくホテルで待ち合わせした夜、
Jが連れて来たのがニノだった。
「Jとは『セフレ』の関係かな?
よろしくね!雅紀…」
そうにっこり笑ったニノの笑顔は、子どものように可愛かった。
「セフレ?あの、セフレ、って…」
Jは、ニノの肩を抱いて、
「今夜は、3人で楽しいことしようぜ?」
そう言った。
何でもない事のように…
いつものように魅惑的なパープルの瞳で、
俺を見つめながら……
頭の奥で、不快なモスキート音が鳴り響いている、
そんな感じだった。