第12章 irony of fate 〜運命の悪戯〜
Jに肩を抱かれて歩く。
ドキドキして、足が縺れる。
すれ違う人たちが振り返って俺たちを見る。
Jは、一人でいても目立つし、
俺みたいな普通の男とガッツリくっついているから、そこも目を引くんだろう。
なんか、ちょっと、優越感……
「雅紀、カラオケ行こうよ」
「カラオケ?…あ、いい、けど…」
「二人っきりになれるじゃん♪」
……二人っきりに?
それって、どういう……?
Jと一緒にやって来たカラオケボックス。
受付を済ませ、バイト風の女の子に部屋まで案内される。
その子も、チラチラJを見る。
それに気付いたJが、
「俺の顔に何か付いてる〜?」
と、女の子を見つめた。
するとその子は、
「あ、いえ、す、すみませんっ///
ど、どうぞごゆっくり…」
真っ赤になって、大慌てで行ってしまった。
「揶揄ったら、可哀想だよ…」
俺の言葉に、
「あなたが素敵だから見惚れてました〜、って、正直に言ったら、キスくらいしてやったのに♪」
「J……」
そう言って笑うJを俺は黙って見つめた。
冗談なのか、本気なのか?
頼んだアルコールが来るまで、Jは、何曲も選んで、勝手にどんどん入れていく。
手持ちぶさたな俺は、
やることもないので、携帯を出した。
『Jと一緒なの?』
『ふたりなの?』
『今度、話聞かせろよ』
風間からLINEが入っていた。
『カラオケ来てる』
そうレスしたところに、
ビールとハイボールが運ばれてきた。
「どうぞ、ごゆっくり〜」
ドアが閉まると、Jはカラオケをスタートさせた。
どこかで聞いたことのある、
激し目のビートが、内蔵まで響く。
Jって、こんなの、歌うんだ…
そう思ったその時……
Jが、俺のとなりにピッタリ肩を組んでくっついてきた。