第12章 irony of fate 〜運命の悪戯〜
どうやって戻ったのか分からないけど、
俺は何とか、風間たちの席まで辿り着いた。
「遅かったじゃん!もしかして…大きい方??」
揶揄って笑う奴らに、
俺は言い返すこともせず、すっかり氷が融けてしまったハイボールを飲み干した。
「どうしたの?トイレでなんかあった?」
風間の声が遠くに聞こえる。
……どうしよう///
どうしよう、俺//////
日付も変わる頃、帰ろうと言う事になり、
俺たちは店の外に出て、それぞれそこで別れた。
俺と風間は、アパートが一緒の路線なので、
ふたりで肩を並べて駅を目指した。
「どうしたんだよ~?さっきからずっと」
「……うん…あのさ」
「雅紀…」
えっ??
店から少し歩いた歩道のガードレールに腰掛けて、近づいてきた俺に声を掛けてきたヤツ…
J………
「…J……」
「待てたんだ…一緒に帰ろう?」
今度こそ、心臓は完全に止まった。
絶対に止まった。
風間が、俺とJを見比べて、驚いた顔をしていたけど、何かを察したのか、
「じゃ、俺こっちだから…またな…」
そう言って、家とは逆の方に歩いていってしまった。
正直、置いてかないでくれ///
そう思った。
だってさ、Jと二人っきりって!?
昨日までの…いや、何なら、1時間前の俺には、信じらない事態な訳で…
「行こうぜ…ま~さき🎵」
Jに肩を組まれて、一度止まった心臓が動き出したような、そんな錯覚さえ覚えた。
「行くって…あの…どこへ?」
「決まってるじゃん…二人っきりになれると~こ❤」
…えっ!?
……それって///
パニックになる俺に、Jは楽しそうに笑いながら、
「雅紀のそういうとこが、堪らなく可愛い~❤」
人生……その先には、何が起きるか分からない…
俺はJと深夜の渋谷の街を歩きながら、
この後、何が待っているのか…
考えることも出来なかった。