第12章 irony of fate 〜運命の悪戯〜
「雅紀、何見てるんだよ?」
仲間の風間に指摘され、焦った俺は、
「別に?なんか煩い奴らだな、と思ってさ」
「あ~、Jたちだろ?」
「風間、知ってんの?」
「う~ん…よく知らないけど、外国人なんじゃないかって、言ってるやつもいたなぁ…」
外国人か…どうりで…日本人離れして…
「あの辺の女、みんなあいつ目当てらしいぜ~?」
「ふ~ん、まあ、だろうね~」
「男も♪」
「男??男って///」
驚いた俺は自然と声が大きくなってたらしく、
風間に窘められた。
「驚くことじゃないよ…ここ、そういう奴が集まって来るって噂の店だし…」
「そういう奴??」
「ま、雅紀には関係ない話だろうけど、
ソッチの人間ってこと。」
ソッチ…??
ソッチの…人間って…
その事実に気付いた瞬間、
ズクンッと心臓が大きく震えた。
あの取り巻きの男たち…
Jが目当て、なんだ…
Jと…そう言う事を…
そういう人がいることは知っていたし、
別にそれに対して偏見はなかったけど……
まさか……
俺が??
でも、そうだと認めてしまえば、
この気持ちに理由が付く。
Jから目が離せない俺の…
俺は…
Jが…
Jの事が……好きなんだ…
初めて知った不思議な感覚。
今まで、どんなにカッコいいと思った人でも、
こんな風になったことはなかった。
「雅紀…お前…ソッチも興味あるんだ…」
少し揶揄うような風間の下衆な視線を振り切るように、俺はトイレに立った。
トイレを済ませ、顔を洗ってから、席に戻ろうとすると、入り口で人とぶつかりそうになった。
「あっ、すみませ…」
「…雅紀…」
それはJだった。