第12章 irony of fate 〜運命の悪戯〜
俺とJは、元々恋人同士だった。
大学生の俺は、自分でバイトして大学に通っていた。
バイトもいくつか掛け持ちし、
生活はいつもギリギリだった。
そんなときに出会ったのがJだった。
俺は、このclubに仲間と遊びに来ていた。
まあ、自分に時間があるときだから、
たまにしかこれなかったんだけど…
俺が金に困ってるのを知ったこの店のマネージャーが、イベントなんかがある忙しいときだけ、
手伝って欲しいと言って来た。
そのバイト料が破格によくて…
深夜になるとはいえ、どうしてこんなに高いのか?
って、怪しんだけど…
そんな美味しい話、断るはずもなく…
Jはclubの客の一人だった。
毎日来るわけでもなく、顔を見せるのは、
大体平日なら水曜日、そして週末の土曜日。
若者でにぎわっている店内で、妙に華やかな集団がいた。その中心にJがいた。
初めて彼を見た時、息が止まるんじゃないかと思った。
黒いシャツに、デニムという、ごく普通の恰好だったけど、なぜか俺は彼に釘付けになってしまった。
柔らかそうな黒髪に白い肌、細身のその身体は、
雑誌から抜け出たモデルのように綺麗だった。
何よりも、見たことも無い様なイケメンで、
大きなその瞳は濃いパープルだった。
カラコンなんだろうけど、その大きな目に見つめられると、息をすることも忘れてしまう程だった。
取り巻きには男も女もいた。
着飾った尻の軽そうな女と、
大学生なんだろうか?
イイとこのボンボンが親の金で遊んでるっていう感じで、正直ムカついた。
その日から、俺はわざとJの来る日にclubに行くようになった。
側に近付ける訳でもないけど、
彼を見ているだけで良かったんだ。