第11章 空蝉
【智】
えっ!?潤…??
俺は翔くんの背中から顔を出し、
前方の暗がりに目を凝らした。
すると確かに…
そこには潤が立ってこっちを見ていた。
暗くてその表情までま分からないけど…
「潤…おかえり…」
そう言いながら翔くんが俺を下ろした。
そうだった///
こんなとこ…
潤に見られちゃいけなかったんじゃないか?
今まで全然顔も合せていなにのに、
これじゃ、潤のいない留守に、翔くんに近付いてたみたいじゃん///
「あの…潤…これは、その…」
「翔くん!ただいま!!」
駆け寄って来た潤は、そのままふわりと翔くんに抱き付いた。
えっ??嘘っ///
「潤!心配してたんだぞ~」
「ごめんね…急遽さ、山小屋のバイト頼まれちゃって…電波も届かなかったから、連絡できなくって…」
えっ??そんなの…ホントに??
「なんだ~、そうだったんだ…よかった~」
「ねえ、翔くん、八ヶ岳の話聞いてよ~♪」
「おう!聞かせてよ~」
「じゃ、このまま、翔くん家行ってもいい?」
「いいけど…」
翔くんが、潤の腰を抱きながら、
俺を振り返った。
俺は一人、バカみたいに立ち尽くしていた。
「智…久しぶり。母さんには、翔くん家行くって言ってあるから…今夜は帰らないかも…」
「あ、ああ…そ、そっか…」
「ねえ翔くん、おじさんとおばさん居る~?」
「いると思うよ、普通に…」
「え~っ、残念(´з`)」
「ははは、何言ってんだよ~
智くん、もう大丈夫だよね?じゃ、また…」
翔くんは、そう言うと、
潤と仲良く玄関の中に入ってしまった。
……………
なんだよ…いったい…
すっかり酔いも醒めた俺は、ひとり家に帰った。
潤が、いったい何を考えているのか、
全く分からなかった。