第11章 空蝉
「智くん、ほらしっかりして~」
「う~ん…あれっ?翔くん??
俺なんか、おばけが見える~♪」
「何言ってんだよ。ほら、行くよ!」
足元も覚束無い智くんを抱えて店を出た。
全く…こんなに飲んで…
駅も近かったから良かったけど。
「しょおく~ん❤」
酔った智くんが、俺の首に両手を回してしがみ付いて来た。
「お兄ちゃんたち~、仲良しだね~」
前から来た会社帰りのサラリーマン風の二人連れが、そう揶揄ってきた。
こっちも酔っ払いだ。
無視してすれ違うと、
「ほら、あれだろ~?今流行りの、おねえ!」
「それを言うなら、ゲイだろ~?」
そう言ってゲラゲラ下品に笑って行ってしまった。
くだらね〜酔っぱらいにイラついた。
ったく、そのどっちでもね~し///
電車の車内、智くんは俺の肩に凭れて爆睡している。
はあ~///もう、しょうがないな~…
こんなに普段飲まないのに。
よっぽど楽しかったんだな~
「ほら、着いたよ!智くん、起きて!!」
「ん~ん…」
智くんの一人くらい、おぶってもいいんだけど、
流石に人目もあるしね…
俺は半分寝ぼけている彼を引き摺るように電車を降りた。
家までの道を、何とか彼を抱えて歩くけど、
脚がフラフラしてるから、歩きにくくて…
あ~///もう面倒くさい!
人気もまばらになったことを確認して、
俺は智くんに背中を向けて膝を着いた。
「ほら!!」
「ふえっ??」
「おんぶ!その方が早いから…
ほら、掴まって!!」
「……うん…」
首に手を回してきた智くんをおんぶして立ち上がった。
これなら、全然いける!
早く家まで送り届けちゃおう!
「しょおく~ん、ごめんね~…
でも、なんか、得しちゃった❤」
「ははは、何言ってんだよ!振り落とすぞ!!」
久々に会えて、俺も少し、嬉しかったんだ。
その時、
「翔くん」
家の前の暗がりで、俺を呼んだのは……
「潤……」