第11章 空蝉
【翔】
大学は、もうすぐ夏休み…
潤がいなくなって半月が過ぎようとしていた。
流石に無断外泊と言っても長すぎるだろうと思ったのか、親のところには住み込みのアルバイトをしていると連絡があったらしい。
短期のバイトなので3週間だけだと…
……もう直ぐ、その約束の3週間…
潤は、本当に帰って来るのかな?
あれ以来、俺のところにも一切連絡してこない。
でも、俺は今の気持ちを、
これからの事を、潤にはメールで送っていた。
メールだから、読んだかどうか分からない。
でも、それでいいって思ったんだ。
俺の気持ちは伝えた。
後は、潤がどうするかだ。
智くんと友達以上の関係になってしまったことは嘘じゃないし、否定もしない。
それを認めた上で、
この先、どうするかは潤が決めて欲しい…
そう言ってある…
智くんとも、
あれからは時々話す程度になってしまった。
潤のいない留守に、二人で会うのは、
どっちからと言う訳でもないけど、
避けていたんだ。
でもその晩、俺はサークルの仲間と飲み会に来ていた。
まあまあ盛り上がって、そろそろ帰ろうとしていると、
「大丈夫かよ、大野~」
という声…
思わず振り向くと、少し先の個室から、
智くんが岡田くんたちと出て来た。
「智くん…」
俺に気付いた岡田くんが、
「お~!!翔くん!久しぶりだね~♪
大野さ、潰れちゃったから送ってやってよ~」
「えっ?ああ…」
この後、二次会に行こうってことに
なっていたんだけど…
でも、岡田くんに抱えられて正体を無くした智くんを放っておけないし…
「分かりました…ほら、智くん…掴まって!」
俺は智くんを抱えて、会場を後にした。