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Baby blue【気象系BL】

第10章 激しい雨の中で


【翔】

「潤…ごめん…」

話が全くわからなかったけど、
潤が……

一人で立っている潤が、堪らなくて、
俺は気がつけば潤を抱き締めていた。

潤は、一瞬抵抗したけど、
今は俺の腕の中で、震えている。

「……潤…」


この家に来た時から…って…
潤はそう言った。

来たって…この家で生まれたんじゃないの?

おじさんもおばさんも、潤の事、可愛がっていた…はず…だけど…

「潤…あのさ…」

俺が話しかけるのを待っていたかのように、

潤が俺から離れた。

「…潤……」

「…翔くん…散らかして…ごめん…」

「そんなのいいんだ…潤、俺…」

潤は悲しそう唇を結んで俺を見つめてから、

「ごめん…今は、翔くんの側にいたくない」

そう言って、玄関を飛び出していった。


「潤!!」

「来ないで!!!」

追いかけた俺は、潤の言葉で固まった。


………雨の中、飛び出していく後姿は、
直ぐに暗闇に見えなくなった。



その後、部屋で聞いた、大野の家の話は、
俺を驚愕させた。

始めは知らなかった潤…
本当のことを知らされた時は、
どんな気持ちだったんだろう…

知らなかったとはいえ、
俺は潤を、ちゃんと支えられていたんだろうか?


潤…

潤……


潤、お前、今まで、
どんな思いで、笑ってたんだよ?

「何で…教えてくれなかったの?」

誰を責めることも出来ないけど、
やるせない思いを、智くんにぶつけた。


「潤が、翔くんだけには知られたくないって、そう言ったんだ…」

潤……

頭を抱える俺のところに、智くんが濡れたタオルを持ってきた。

「脚…冷やした方がいいよ、酷くなる…」

「あ、うん…ありがと…」

タオルを脚に乗せる俺の横で、
智くんは散らかった部屋を片付け始めた。


明日、潤とちゃんと話そう…

潤が…潤だけ好きだと、何度だって伝えよう…



「智くん…俺…」

「分かってる」

智くんは、それ以上何も言わなかった。


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