第10章 激しい雨の中で
「翔くん、火傷したの?冷やさなきゃ…」
潤から離れ、俺に駆け寄る智くん。
「大丈夫だから…」
「でも…」
潤が…
見たことも無いような悲しい目をして、
俺を見つめていた。
「潤…」
堪らず俺は、潤に近付こうと一歩脚を出した。
火傷した足の甲が、じりじり痛んだ。
「来ないで!!」
「潤…」
「俺に近寄らないで!!
…翔くん…酷いよ…こんなこと…
俺の事、好きだって言ってたの、嘘だったの??」
「嘘じゃない!潤のこと、俺ちゃんと…」
「ちゃんと好きなら、どうして智なんかと」
「俺が誘った」
俺と潤は、智くんを見た。
智くんは俺の足元で正座したまま、ぽろぽろと涙を零していた。
「智くん…」
「潤…俺…俺が、翔くんを誘って、抱いて、もらったんだ…翔くんは、悪く、ないよ…翔くんは…今でも、お前が…」
しゃくりあげながら、とぎれとぎれに話す智くんを、潤はずっと睨みつけていた。
「だから…翔くんを…責めないで…翔くんは…」
「知ってたよ、お前が翔くんのこと好きだったってこと…」
「潤…」
「ずっと前から…子どもの頃から、好きだったよな?もう、それこそ気持ち悪いレベルで。
ずっと翔くんだけの事…」
潤の言葉に、俺は声も出なかった。
智くんが…
そして、それを気付いていた潤…
俺だけ…知らなかった、ってことかよ…
「だからわざと、お前の前で翔くんとのこと、見せつけてやったんだ!お前が早く諦める様に…」
「潤…」
潤が悲しそうに俺を見た。
「酷いだろ?俺…智がこそこそ、こんなことしたくなっても仕方ないんだ…俺が…いつも…」
「そんなことないよ、潤は全然…」
「来るなよ!!!」
もう一度、潤の側に行って抱き締めようとして、はっきりと拒絶された。
潤の目に…胸がちぎれそうだ…