第10章 激しい雨の中で
【翔】
「好きなんだ…」
俺は、声のした方を見た。
時間が、ピタリと止まったようで、
雨の音さえ聞こえない…
『好きなんだ』
じっと潤を見つめて、そう言った智くんの顔は、
こんな時に不謹慎だけど、
息を飲むほどに綺麗で…
彼が今、何を考え、
何を言おうとしているのか、
俺には検討もつかなかった。
「…もう、一回…言ってみろよ」
低い…地を這うような潤の声に、
智くんは、さっきよりも少し大きな声で言った。
「俺は翔くんが好きだ」
「ふざけんなよ!!」
「ふざけてなんかいない!」
「…智、てめぇ~///」
「何度だって言うよ…翔くんが好きだ!
この気持ちは、潤にだって負けな…」
「ふざけんなっ//////」
潤が智くんにとびかかった。
「やめろ!潤!智!!」
それからはもう、修羅場だった。
智くんに馬乗りになって殴りつける潤。
今度はその体勢が入れ替わって、
潤の頬が鈍い音を立てる。
テーブルの上のコップが転がって水が零れ、
吹き飛んだカップ麺の汁が俺の脚にかかった。
「やめろよ!」
「やめろっ!!」
「もう止めてくれぇっ//////」
俺は拾ったコップを、思いっきり床に投げつけた。
ガッシャァーン//////
ガラスが辺りに飛び散って、
縺れあっていた二人が動きを止めた。
潤が俺を見た。
赤く腫れあがった目で…
智くんが切れた唇で俺の名を呼んだ。
「翔くん…脚…」
見れば俺の脚も、真っ赤になっていた。
夢なら…
悪い夢なら、どうか…
どうか、早く醒めてくれ///
俺は…
俺のした事が、こんなことに…
なる、なんて……