第10章 激しい雨の中で
ドアに手を掛けると、幸い鍵が開いていた。
俺は、わざと音をたてないように静かに開けた。
まあ、もっとも、この雨の音で、
小さな音なら、簡単に搔き消されてしまうだろう。
靴を脱いで上がると、
びしょ濡れの俺の脚から雨が伝わって流れた。
見ると、薄暗い廊下に、
リビングからの灯りが漏れている。
雨の音で、話し声も聞こえてこない。
そこに二人がいるのかさえ、定かではない。
でも……
俺は感じていた。
その灯りの中にある…
あってはならないはずの、湿った…気配…
確かにそこに二人は入る。
声も出さず…
ふたりで、
ふたりで、まさか……
ガタガタと震える腕を自分でギュッと押さえて、
俺は、そっとリビングのドアに近付き、
嵌め込みの透明なガラスから、中を覗き込んだ。
そこに、見えたのは…
俺の目に飛び込んできたのは、
裸の智の背中。
そこに回された……
あれは、間違いなく翔くんの手。
そして//////
何やってんだよ!?
俺は、急いでそのドアを開けて、中に飛び込んだ。
「潤…」
「…潤…なんで…」
「お前ら、何やってんだよ…」
そんな顔して俺を見るな!!
ふたりで、同んなじ目で…
俺を見るなっ//////
「潤…これは、その…」
焦る翔くん。
でも、智は黙っている。
「翔くん…なんで…」
「いや、違うんだ…これは、あの…」
「何が違うの?今キスしてたよね?
智と!俺に内緒で!
内緒で二人で会ってたのかよ??」
怒りで…
激しい怒りの炎が、俺の身体を焼き尽くしてしまいそうだ。
「潤、聞いて!」
「なにを??こんなの見せられて、戯れてただけだよなんて言うつもりじゃないよね?」
「潤、お願い、聞いて!!」
「聞きたくないよ!!翔くん、こんな…こんなの…」
「好きなんだ」
智が、俺を見つめてそう言った。