第10章 激しい雨の中で
【翔】
……智くんの目が言う…
もう一度抱いて欲しいと…
言葉になんかしなくても、
それは痛いほどに、苦しいほどに、
俺の心に響いて来る…
なぜって…
それは、
俺も、
同じ気持ちだから…
こんなこと、許されない。
世間的には知らない。
だけど、
俺の中では、あの夜で終わっていた。
俺は、潤の事を愛している。
でも智くんのことも…
その重さは測れないし、
これは比べるべきじゃない。
ふたりを比べるなんて、そんなのできない…
だったら……
俺は潤と付き合うって決めた。
潤を支えていくって、そう心に誓った。
だから、今ここで、
智くんと、また過ちを犯す訳にはいかないんだ。
「智くん…俺は…」
「翔くん…好きなんだ…」
「でも…俺は…」
「お願い///」
突き放せないのは…
止めてくれ、って、
そう彼を押し返せないのは、俺の弱さか?
………
……そうじゃ…そうじゃない///
突き放せないのは、俺も…
神様に背く気持ちを持っているから…
俺自身が、気付かないようにしてた気持ち。
智くんの事を、忘れられない思いが…
心を覆う背徳感が、俺のブレーキを外す。
俺の胸に顔を埋めていた智くんが、
ゆっくりと身体を離した。
絡み合う視線…
交差する想い…
欲情に縁どられた彼に瞳に吸い寄せられるように、
俺たちはゆっくりと唇を重ねた。
「んっっ///」
鼻に抜ける甘い声が、最後に残った俺の理性を剥いでいく…
……智くん///
すべすべの背中に、手を回したその瞬間、
リビングのドアが大きく開いた。
「潤…」
「…潤…なんで…」
開け放たれたドアの前には、
目を見開いた潤が泣きそうな顔で立っていた。