〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第78章 桃色媚薬-戯れと蜜の恋-❀明智光秀❀
「んっ…はぁっ、はぁっ…」
後ろ手に襖を閉め、そのまま背中をもたれかける。
足はすでに力が入らず…
ずるずると襖に背中が滑り、そのままぐったりと座り込んだ。
荒く息が漏れて、呼吸が整わない。
肌は熱く、身体は火照り……
神経が尖って、まるで自分の身体ではないようだ。
(くそ、俺としたことが……)
自分がこんな状態になった理由は、自分が一番よく解っていた。
いつもならもっと警戒するのに…
ほんの少し気を緩め、口にしてしまった。
それが、全ての元凶だ。
ぞくっ、ぞくぞくっ……
腰から痺れ上がるような感覚。
そして身体中の熱は、俺のある一点に集中して疼く。
────それは、俺の男の象徴に
「ぁっ…ふっ、ぅうっ……」
自分ではないような艶かしい息を吐きながら、今に至った経緯を再度頭の中で遡る。
にやりと笑った女郎の顔が浮かび…
今の俺を嘲笑うかのような声が、耳の側で聞こえてくるようだった。
*****
女郎の中には、その身を持って情報を得て、他者にそれを売る者も少なくはない。
現に、身体を売る商売をしていれば…
閨でしか聞けない、秘密裏の情報などを聞くこともあるのだろう。
俺は、ある一人の女郎と通じていた。
その女は国内国外問わず、権力を持つ様々な男達と関係を持っていた。
俺はそれに目をつけ…
女の元を通う振りをして、その者から様々な秘密の情報を得ていた。
無論、女郎の元に通うわけだから、その女を抱かねば意味が無い。
そこは男と女が戯れる場所。
俺もそうする事で女を満足させ、また次の利益のある情報を掴ませる事が『仕事』の一環でもあった。
────勿論、そこに情などはない
だが、俺は最近。
その女郎はそろそろ潮時だと、見切りをつけようとしていた。
それは女が俺に対し、客ではなく一人の男として恋慕の情を見せるようになったからだ。
そのような感情は、はっきり言って邪魔。
女は『情報屋』、俺は『買人』。
それだけの関係でよい、そこに情など不要だ。
それに──……
俺自身、女郎を相手にする事に、少し罪悪感を覚え始めていたのもある。
理由は簡単。
俺にも、俗に言う『想い人』と言う存在が出来てしまったからだ。