〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第76章 純華溺愛恋情論《後編》❀明智光秀❀
「ちょっ…明智様……?!」
店に無遠慮に入り、つかつかと歩いていると、店主が慌てて側に寄ってきた。
香の炊いた、薄暗い店内。
ここのどこかで政宗と美依が…と考えるだけで、心が軋む気がする。
実は仕事絡みの関係で、この店主とは顔見知りである。
まさか、こんな時に役に立つとは。
俺は側に寄ってきた店主に向き直ると……
鬼の形相で、殺伐と問いかけた。
「蒼い目をした男と小柄な女が、さっき店に入って来ただろう。どこの部屋だ」
「え…何故ですか?」
「重要人物故に、検めたいことがある」
「なっ…!それは大事ですな、ご案内します!」
全て嘘とも言えない嘘をあっさりつき、店主に部屋を案内させる。
少し卑怯だとは思ったが……
情事真っ只中の部屋を、闇雲に開けて回るよりはいいだろう。
店内全体に、桃色の空気が漂う中。
店主に案内されたのは、一番奥の部屋だった。
いくらかの謝礼を店主に渡し、そのまま下がらせる。
(ここに、二人がいるのか……)
耳を澄ましても、襖の奥からは、特になんの音も聞こえてはこない。
一体、二人はどうしているのか。
美依はまだ、政宗の手に落ちてはいないか。
俺はふぅっと一呼吸置き……
中に声も掛けず、いきなり襖を開いた。
「────…………?!」
「よお、光秀」
(なん、だ…この状況は……)
襖を開け、飛び込んできた光景に、俺は思わず絶句した。
向かい合って座る、政宗と美依。
二人の間には、茶器と茶菓子が置かれ……
茶菓子を食べていたと思われる美依は、俺を見て喉を詰まらせたのか、必死に胸の辺りを叩き。
なんとか飲み込んだと思われる後で、再度俺の顔を見て、間抜けた声を上げた。
「み、み、光秀さんっ……」
「な?俺の言った通りだっただろ、光秀が来るって」
「本当だ、どうして……?」
「……」
……政宗、俺が追ってくると踏んでいたな?
政宗の言葉に、思わず頭に血が上る。
つまり…俺は政宗の罠にまんまと引っかかったのか。
俺を待たせ、美依と居るところを目撃させ。
後を追わせて店に入り、来るのを待っていたと言う事か。