〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第73章 望月の恋人《前編》❀徳川家康❀
『俺以外の男がほいほい引っかからないように…その可愛さ、しまっといて』
貴方と恋仲になって。
貴方はなんだか、すごく私を甘やかしてくれるようになって。
戸惑い、それでも──……
すごく嬉しかった事、今でも覚えてる。
『可愛くない!』
『はい駄目、それも可愛い』
『変だよ、家康!』
『変じゃない。変なのは、可愛過ぎるあんた』
馬鹿みたいに幸せな言い合いをしたね。
私を可愛いと言ってくれる、貴方が。
本当に、本当に大好きで……
この命を投げ打っても構わないと。
初めて、そんな風に思った。
────だから、最後なんて言わないで
私は貴方と生きていこうと決めた
二度と元の世界へは帰れなくても
貴方との愛を貫く事を決めたんだ
家康、貴方を愛してるよ
だからお願い、話を聞いて
いつもみたいに、優しく耳を傾けて
私は貴方の傍に居たい
それが幸せなの、私の唯一の光なの──……
(……いつまでこの状態が続くんだろう)
私は疲れきった身体を奮い立たせ、こっそりと外を盗み見る。
そこからは、明らかに味方ではない兵達がいて……
それは、まだ緊迫した状態が続いているのだという事を、意味していた。
────籠城してから、もう三日になる
顕如討伐のために、本隊に信長様と三成君を残し、家康の子隊が安土に向かったのは三日前の事だった。
信長様は、国境の小競り合いを収めるため出陣した家康を援護するために、少数の軍を率いてきただけで。
その時は、顕如と真っ向勝負になるとは思ってはいなかったから。
だから、織田軍の主力はまだ安土にある。
今、安土では秀吉さんが待機しているから。
家康が子隊を引き連れ、安土に戻って兵を集めてくる。
そう決まり、私は家康と一緒に安土へ戻って、戦が終わるまでお留守番することになったのだけど……
今、こうして古城に籠城している状態。
それは私と家康達が安土に向かい始めた、最中の事だったんだ。
本隊を離れ野を駆けて……
そうしている間に、顕如の一隊と本隊が遭遇し、混戦になったと報せを受けた。
こちらは圧倒的に手勢が足りない。
だから、一刻も早く安土に急ぎ戻り、状況を知らせて兵を引き連れて来なければ……
そう思っていたのに。
事態は最悪の方に転がったんだ。