〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第70章 天色、椛、幸福の螺旋❀織田信長❀
────きっと、探していた気がする
俺はこの手で幾千幾万の命を摘み取ってきて
奪ってきた命、全てを背負うと決めた
人は温かく、そして儚い
奪ってきた俺が、それを手にすることは許されない
そんな温もりは求めてはいけないと……
いつしか自分の心は冷えてしまった
しかし──……
貴様に出会い、その温かさに触れて
いつしか凍りついた心は雪解けを迎えた
鮮やかで温かく、そして眩しい
貴様という存在は……どこまでも尊い
そんな貴様を、俺はきっと探していた
ずっとずっと前から、知らぬうちに
────愛しい、美依
貴様に言いたい事がある
それを伝えたら、どのような顔をするだろうな?
顔を歪めて泣くか
それとも、愛らしく照れるか
いや──……天女のように微笑むだろうな
その顔を、俺は見たい
だから、きっと見せてくれ
愛らしい貴様に、余すことなく伝えるからな?
(美依……?)
思わず酌をする手が止まり、辺りを見渡す。
しかし、望んでいた姿はそこにはなく……
俺は疑問に思い、思わず眉を寄せた。
────季節はすでに中秋
葉もすっかり鮮やかに染まり、吹く風は澄んでいて、高い空がなんとも心地良い。
そんな、秋麗かな今日。
城下から少し離れた場所に、紅葉狩りをしに来た。
政宗、秀吉、家康、光秀、三成、そして美依。
忙しい日々の骨休めも必要だと命を下し、皆で揃って情緒ある風景を愉しんだ。
そして今は、紅葉の下で小さな宴会中だ。
城から持ってきた酒と、政宗が作った豪勢な弁当。
それらを並べ、七人でささやかな宴を開いていたが……
気がつけば、美依の姿が見当たらない。
俺に酌をしたり、武将達に色々絡まれたのを見ていただけに……
一体どこに消えてしまったのだろう。
「おい、秀吉」
「どうなさいましたか、信長様」
「美依はどこへ行った?」
すぐ真横で家康らと談笑していた秀吉に声をかける。
すると秀吉は『ああ、美依なら…』と言いながら、こちらに振り返り。
少し酔っ払ったような、ふわふわとした面持ちで、俺の問いに答えた。