〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第69章 〖誕生記念〗満ちる月、君を想へば❀伊達政宗❀
────なんて事ない、たわいない日だった
毎年その日が来ても、それは一つ歳を取るだけで、
確かに宴やら何やら、祝ってもらっていたけど……
俺にとっては、いつもと変わらぬ一日だった。
でも、お前が現れて。
『その日』は少し、特別な日になった。
生まれた事を、心から喜んでくれる。
眩しい笑顔を向けて、祝ってくれる。
そんなお前が居るから、俺は満たされる。
────美依、お前が好きだ
好きなんてモンじゃない、
もっとえげつなくて、みっともなくて、
でも、どこまでも純な赤裸々な想い。
お前を愛してる。
だから、こっち来い、もう離れるな。
月が濃紺の夜空に満ちるように、
お前という光で、俺を照らしてくれ──……
(……どうしてこの組み合わせなんだ?)
秋の気配が訪れ始めた、安土城。
次第に木の葉は鮮やかな赤に染まり始め、夏の名残も薄れてきた、今日。
天主に呼ばれた俺は、不思議に思って首を傾げた。
今日は天主で軍議だ。
いつも広間でやるのに、何故今日は天主なのか…と言う疑問もさながら。
天主に集まっているのは、信長様、三成。
そして、家康の三人だけだ。
信長様の腹心である肝心の二人は、どこに行ってしまったのだろう。
「信長様、少し伺いたいことが」
「どうした、政宗」
「何故今日の軍議は天主なのですか?しかも、全員揃っていないし……」
俺が脇息にもたれかかる信長様に問いかけると。
信長様はくすっと笑い、何かを愉しむかのような、そんな含みを帯びた声で答えた。
「広間は美依が使っているのでな」
「美依が?」
「ああ、誰も入れるなと言われれば、聞いてやるしかないだろう。ちなみに秀吉と光秀も美依に頼まれて、野暮用の最中だ。別にこの面子でも軍議が出来ぬわけではない、貴様ら三人が居れば事足りる」
「はぁ……」
(……広間で何やってんだ、美依?)
そんな疑問が自然に沸き起こる。
しかし……今日は九月四日。
明日の九月五日がなんの日かと考えれば……
その疑問は、あっさり解決することになるのだが。