〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第7章 聖なる夜に煽れる溺愛を ❀石田三成❀
────師走、肥前国
南蛮貿易の要港があるこの土地に、三成と美依が訪れたのは、暮れも押し迫った頃だった。
種子島に鉄砲が伝来し、そこから発達した南蛮との貿易。
絹布、木綿、鉛、金などを輸入し、これから天下に名を馳せようとしている信長も、勿論この交易にも携わっている。
特に信長は南蛮との貿易を積極的に行い、それを好んだ為に、こうして実際に港に足を運ぶことも度々あった。
今回は三成がその役割を任せられ……
美依と共に訪れたのである。
何故美依も一緒に訪れたのかと言うと、生活能力皆無な三成の、身の回りの世話を任されたから。
三成は少数の家臣と共に、肥前での公務をこなし。
そして、十二月二十四日。
ようやく公務を終え、明日には安土へ戻る。
そんな矢先の出来事だった。
「美依様、お待たせしてすみません!」
一人木の下で待つ美依に、三成が駆け寄る。
すると、美依はやんわりした仕草で三成の方を向き、『大丈夫だよ』と答えた。
肥前での公務が終わり……
三成は美依に誘われ、待ち合わせていた。
安土に帰る前に、寄ってみたい所があると言うのだ。
「ありがとう三成君、付き合ってくれて」
三成を見上げ、美依がふにゃりと微笑む。
その柔らかい笑顔を見て、三成は思わず目元を緩めた。
すでに陽は暮れ始め、辺りは薄暗い。
そんな中での逢瀬の誘い。
思わず、心踊らずには居られない。
美依は世話役として共に肥前へ訪れてはいたが、美依自身は公務からは離れていたため……
朝晩以外はほとんど別行動で、ゆっくり一緒に観光なども出来ていない。
美依は世話役をこなしながら、散歩程度は行っていたようで。
夜に夕餉を共にしながら『こんなのがあったよ』と話を聞くのが、いつも楽しみだった。
(美依様の行きたい場所……興味があるな)
実は、美依とは最近恋仲になったばかりで。
今まで逢瀬らしい逢瀬をした事が無かったのもあり、余計に美依からの誘いは有難かった。
きっと新たな美依の一面が見れる。
そんな思いもあったからだ。