〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第56章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《前編》❀織田信長❀
『必ず貴方に会いに来ます、約束です』
────私が二度目のタイムスリップに巻き込まれ
そこで出会った『小さな貴方』と、
私は約束の指切りげんまんをした。
今より、ずっと小さな手で、
元服してまもなくだった、貴方。
それなのに、私を好きだと言ってくれましたね。
約束します、貴方が大きくなって、
天下取りを目指すようになったら──……
必ず、必ず会いに行くから
だから、その気高く純粋な心を忘れないで
どうか、再び巡り会う、その日まで。
『信長様────…………』
「わぁっ…かなり強く降ってきちゃいましたね!」
天主を打ち付ける嵐の音が耳につく。
皐月の嵐の晩。
私と信長様は、二人で晩酌をしながら顔を見合わせた。
夕方頃降り出した雨は、一気に強くなり、また風も強く吹き始め……
本格的な春の嵐になり始めたのは、つい先程だ。
ザァザァと強く雨粒が叩きつけられる音がする。
それは、心のどこかを不安定にさせ……
私は思わず曇り顔で、信長様から視線を逸らした。
「……怖いか、美依」
「怖くはないですが、雨の夜ってなんか不安になります」
「そうか……ならば、こちらへ来い」
すると、信長様は私の腰を引き寄せ、自分の膝に横座りで座らせた。
私は引き寄せられるがまま、信長様にぴったりくっつき、照れるまもなく、その腕で囲われてしまい……
ああ、あったかいな。
そんな風に思って、思わず頬を緩めた。
私が不安になると言ったから……
信長様は相変わらず優しいな、と思う。
「……急に昔の事を、今思い出した」
と、信長様が私の耳元で、ふうっと息を吐いた。
私が信長様の顔を見上げ『昔の事?』と問いかけると、信長様は何故か懐かしそうに、目を細める。
「明日は俺の誕生日だろう?」
「はい、明日は信長様のお誕生日です」
「過去にも一度、誕生日にこうして嵐になった事があった。確か、元服して間もない頃だ」
信長様が昔の話をしてくれるのは珍しい。
だから、私は興味の引かれるまま、信長様に催促をし。
その話の続きを信長様はしてくれ……そうになったのだが。