〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第55章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀家康END❀
「────…………!」
背中に温かなものが触れる。
気がつけば、身体の前に細い腕が回っているのが解って。
美依に背中から抱き締められたと。
頭の中で瞬時に理解し、思わず背筋が伸びた。
すると、美依はその腕を微かに震わせながら……
消え入るような、小さな声で願ってきた。
「帰ら、ないで…………」
────刹那
頭の中で、線が一本切れたのが解った。
欲しい、美依が欲しい。
無けなしの理性が、脆くも崩れ去る音がする。
その言葉は反則だよ、美依。
それ、男に言ったら……
『合意』と同じ意味だからね?
「ああもう……!」
俺は再度美依の方に向き直り、美依をぎゅっと抱き締める。
奪ってしまいたい、何もかも。
美依に俺を教え込んで、溺れさせたい。
「美依、種飛ばしの時の『ご褒美』の話、覚えてる?」
「あ、う、うん……」
「それ、今にする。今ご褒美もらう、美依から」
「なに……?」
「────美依自身を、もらうから。いい?」
すると、美依は先ほどのように顔を胸に埋め、こっくりと首を縦に振った。
もう、逃げられないよ、美依。
俺を煽ったんだから、覚悟しなよ。
美依の温もりが全身に移る。
それだけで、混じりあってしまうような……
不思議な心地がして、俺はこれから訪れる甘い夜に、思いを馳せた。
────…………
────戸惑いと、迷い
強くなると決めたあの日から……
自分が『幸せ』になる事を拒んでいた
幸せと引き換えに、力が欲しかった
故に、誰かを幸せにする事なんて、思いもせず、
まさか誰かを愛するなんて事も…予想外だった
けれど、俺の心に良い意味で、無遠慮に踏み込んできたこの子を、この手で幸せにしてやりたいと。
幸せの意味すら解らなかったが、無条件にそう思った。
駆り立てられる、熱情。
野心にも似た、その熱く持て余す感情を。
────きっと、この子は受け入れてくれると
俺が愛したように、愛してくれた
なら……それに全力で応えるべきだろう?