〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第53章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀秀吉END❀
────だいすきだよ、秀吉さん
瓶で川に流された美依の恋文。
俺はその一文を読み、目を見開いた。
貴方に恋をしたって……俺に?
こんなずぶ濡れになって文一つを争ったことに、我ながら子供だなと、ほとほと呆れ返っても、それでも。
(想い合えてた、美依と)
「ちっ……秀吉かよ。にやにやするな、くそっ」
「あー馬鹿らし、帰ります」
俺の肩越しに文を覗いていた政宗、家康は、やはりびっしょり濡れた身体で悪態をついた。
俺は緩む頬を抑えられず、どうしても笑みが零れてしまう。
でも、そんな自分が嬉しくて堪らない。
やっと争奪戦の決着がついた、そんな昼下がりだった。
────…………
(さすがに、このままじゃな……)
俺は御殿に戻ってくると、湯を浴びる準備をしながら窓の外を見た。
陽はすでに落ちかかっているが、湯を浴びる時間くらいはあるだろう。
勿論、すぐに美依に逢いに行きたい、それでも。
こんなずぶ濡れの子供っぽい自分を、美依に見られたくなかった。
美依には今まで、大人の兄貴として接してきた。
俺を好きだと言うなら、そんな自分が好きなのだろう。
そんな風に思ったから、きちんと身支度をしてから逢いに行こうと決めた。
(自制心、保つのも難しいな……)
思わず、苦笑が漏れる。
もっと…色んな意味で自分を晒せたなら。
ずぶ濡れで逢いに行けるくらい、格好悪い自分を見せられたなら……
大人になるに連れ、身に付いた体裁振ること。
それは良い事なのか、悪い事なのか。
美依に対してだと、何がいいのか解らなくなる。
────多分、それだけ好きって事なんだな
(……なんか、騒がしいな)
パサッと上の着物を肩から滑り落とした時。
何やら、パタパタと廊下を走ってくる音が聞こえ、思わず眉をしかめる。
廊下は走ったら危ないだろう、一体誰だ?
すると、その足音はだんだんと近づいてきて……
瞬間、ぱーんっ!と脱衣所の引き戸が勢いよく開き。
「秀吉さんっ……!」
今まさに心に描いていた人物が、俺の前に姿を現した。