〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第39章 サクラノアメ-朔夜-❀石田三成❀
(やっぱり、居なかったな、美依様……)
足を運んだ反物屋に背を向ける。
私は何度ついたか解らないため息をつき、再度空を仰いだ。
今にも、雫が零れ落ちそうな曇天。
それは夕刻に近づき、さらに暗いものへと変わってきていた。
────あれから、美依様を探して
私は自分なりに、色んな場所へと赴いた。
美依様の行きそうな場所、好きな店。
思いつくままに足を向けたけれど……
案の定と言うか、美依様の姿は影すら確認出来なかった。
(考えてみれば、こんな時に買い物なんてしないな)
反物屋に足を運んだ自分に馬鹿らしくなり、失笑が漏れる。
何をやっているんだろう。
本気で探す気はあるのか、私は。
『────三成君』
とぼとぼと重い足取りで歩けば。
美依様の朗らかで、可愛らしい笑みばかりが浮かんでいた。
そして、あの夜の美依様も。
『ぁっ…ぁあっん…三成、君……!』
艶っぽい喘ぎ声、火照った白い肌。
淫らに零れる、甘い蜜も。
それを思い出すだけで、狂ったように熱情が生まれ。
気づけなかった自分の愚かさと、美依様への罪悪感と。
こんな時まで『欲しい』と思う、男の情欲。
そればかりが心に渦巻いて、私を押し潰してしまいそうだった。
『三成君は、私がお嫁に行ってもいいの?』
きっと……
美依様は私に引き止めて欲しかったのだと思う。
『嫁になんか行くな、私の元に居ろ』と。
その言葉を、きっと待っていた。
でも、私が突き放したから……
だから、きっとあんな事になったのだと思う。
────結ばれないなら、せめて一夜の戯れを
「馬鹿、ですね、私は……」
遠ざけておいて、求めるなんて。
なんて身勝手でわがままなのでしょう。
それ程までに、貴女の肌は温かかった。
一度囚われれば、離せなくなるくらい。
私を芯から縛り付けて、逃がさないのだ。
もう、手遅れですか?
過ってしまってからでは、遅いのか。
やっと、やっと貴女への想いに気がつけたのに。
貴女は、一体どこへ消えてしまったのですか……?