〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第35章 淡紅染まりし蜜一夜《前編》❀織田信長❀
────その夜、私は天主に投げ込まれた
「信長、様っ…ごめんなさい……!」
「許さん、貴様は自己管理能力が欠落しているらしい」
「そ、そんな事は……ぁっ!」
お酒のせいであまり自由の利かない身体が、柔らかい絨毯に押し倒され、組み敷かれる。
私を組み敷いたその人、信長様は。
私を上から見下ろしながら、その紅玉のような瞳を細め、少し怒りを滲ませた声を紡いだ。
「貴様にしっかり解らせねばな……貴様に触れていいのは俺だけだと。そして、その身は全て俺のものだと言うことを。理解するまで、たっぷり教え込んでやる……その身体にな」
(……っっ!)
紅い視線に囚われる。
嫉妬にも似たその眼差しは、私を鎖で縛ったように動けなくする。
外は、いつしか春の嵐になっていた。
この天主もまた、荒ぶる信長様に為す術もなく。
色濃く咲き乱れる、嵐のような激しい一夜の始まりだった────…………
────事の始まりは、昨日の事。
私が信長様に、外出の許しを乞うために、天主を訪れた事だった。
「町娘達と夕餉だと?」
信長様が視線をゆっくり私に向ける。
私は信長様と秀吉さんが対峙して話し合いをしている、少し後ろに正座し、こくっと頷いた。
「はい、この前茶屋に行った時、仲良くなった子達が居るんですけど……一緒にご飯を食べようと誘われて」
「ほう……」
「一応夜の外出になるので、信長様に許可をいただいた方がいいかなって」
「夜の外出なんて大丈夫なのか、心配だな」
秀吉さんも身体ごと私の方に振り返り、心配そうに眉をひそめた。
現代であれば、夜にご飯を食べに行くだけの外出なんて、特に心配なんてないけれど……
でも、ここは乱世。
いつ何があるか解らない、しかも夜だし。
でも、女の子同士でわいわいする時間も欲しい。
普段は武将達に囲まれているから……たまにはね。
「秀吉さん、女の子同士で夕餉を食べて来るだけだよ、大丈夫」
「でもなぁ…お前は一応織田家ゆかりの姫という立場だからな」
「秀吉、あまり美依を縛り付けるのも良くないだろう」
すると、私と秀吉さんのやり取りを聞いていた信長様が、脇息にもたれ掛かり。
その口元に薄い笑みを浮かべながら言った。