〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第34章 胡蝶ノ乱舞《後編》❀秀吉 × 光秀❀
「────政宗、美依は居たか」
時は少しばかり巻き戻る。
春の夜の宴も終宴に差し掛かり…
美依を探しに行って帰ってきた政宗は、信長に尋ねられ、首を軽く横に振った。
少し目を離した隙に、美依は宴を抜け出し、どこかへ行ってしまったようで…
信長はひどく美依の事を心配していた。
「美依の奴、相当酔っていたみたいだから、酔い醒ましに風でも当たりに行ったんでしょう。まぁ、部屋に帰るんじゃないですか?」
政宗は信長の横に、どっかりと座りながら答える。
信長はと言うと、手にした酒杯に口を付けながらも、なんとも腑に落ちない表情をしていた。
「光秀は見なかったか」
「え?」
「美依の後をすぐに追ったんだがな」
「……さぁ、見てないですね」
(言えるわけねぇだろ、今二人はお楽しみの真っ最中なんて)
信長に嘘を答えると、政宗は心の中でそう呟いた。
本当は美依の居場所も、光秀の居場所も知っている。
と、言うより、芳しい香りに釣られて行ってみれば…
二人は庭の隅で交わっていた。
しかも、あの香りは『例の香』の香りだ。
家康、三成、美依の間に起こった事件の時、あの香りは身を持って実感しているから間違いない。
光秀はあの香りに惑わされた、と言ったとこだろう。
「信長様、後で俺が美依の部屋の様子を見に行きます」
と、傍で信長に酌をしていた秀吉が、信長に頭を垂れて言った。
その様子に、信長は軽く頷き、
「美依が居ないなら、宴もつまらん。もう夜宴は終わりだ、すぐにここを片付けろ。政宗、貴様は俺と一緒に天主へ来い」
すぐに羽織を翻して、夜宴の席を立った。
その後に政宗も続き、側に控えていた女中達が片付けを始めた頃。
秀吉は眉をひそめ、光秀に対して苦言を申した。
「ったく、光秀の奴…後を追ったなら、きちんと美依を探してこい」
「光秀様も何かお考えがあるのでしょう」
「全く、本当にアイツは何をやってるんだか…」
「秀吉さん、それ今に始まった事じゃないでしょ」
秀吉の苦言に…
家康と三成は、片や呆れたように、片やにこにこと笑みながら答え、それぞれ宴の席を離れた。