〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第31章 〖V.D企画〗甘い恋人-家康編-❀徳川家康❀
────もどかしいのは解ってる
近くはないが、決して遠くもない。
俺と美依は、そんな関係。
ただ、俺は美依の事が好きだ。
向こうがどう思ってるかは知らない。
多分嫌われてはいないが、好きとは違うかも。
だから、余計にもどかしい。
今のままでは嫌だけど、伝える勇気もない。
好きと言ってしまいたいけど、嫌われたくない。
心の中は、いつも葛藤の嵐だ。
天邪鬼は筋金入り。
欲しくても、欲しいなんて言えない。
こんな俺だから、周りももどかしくなったのか?
『背中を後押し』という名の『強行突破』
それは吉と出るのか、凶と出るのか──……
「ねぇ、家康。明日は何の日か知ってる?」
如月の安土城。
冬晴れで空気が冷えきっている中、城の庭を眺めながら、美依が可愛くそう尋ねてきた。
最近、よく美依と二人きりで庭を眺める事が多い気がする。
軍議終わりだったり、ちょっとした公務の合間だったり。
(明日、明日……って、なんだ?)
俺は思考回路を巡らせ、首を捻った。
明日は二月十四日。
節分も終わってしまったし、あと何かあっただろうか?
考えても、特に思い当たる事がないな……
俺が解らないまま無言でいると、美依は何故か得意気にニコッと笑って。
そして、ぴっと人差し指を立てた。
「明日はね、バレンタインデーなんだよ!」
「ばれんたいんでー……ってなに」
「女の子が、好きな男の子に甘味をあげる日なの、私が居た世界では主流の行事だったよ」
「なにそれ、五百年後の行事なんて解るわけないでしょ。美依は本当に天然なんだから」
俺が思わず美依の頭を小突くと、美依は照れたように笑んで『ごめんなさい』とはにかんだ。
可愛いなぁ……と思いつつも。
何故美依は俺にこの話題を振ってきたのだろう。
何故か無性にそれが気になった。
『女が好きな男に甘味をあげる日』
美依にも甘味をあげる相手がいるのだろうか。
それが気になって気になって仕方ない。
なので、少し美依に探りを入れる事にする。