〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第28章 《桃源郷物語》華音-Kanon-❀豊臣秀吉❀
「悪い…中に、出しちまった……」
美依を抱き締めながら、荒い息を整え言うと。
同じように息を整えていた美依が、首を横に振った。
「いいの…秀吉さんがいっぱい欲しかった」
「美依……」
額に汗を浮かべ、頬が昂揚している美依は、とても綺麗で。
思わずその火照った頬に口付けを落とすと、美依は気持ち良さそうに身をよじった。
「ねぇ、秀吉さん……」
「ん…どうした?」
「私、思ったんだけど……」
すると、美依は真剣な表情で、予想外のとんでもない台詞を放った。
「逃げよう、秀吉さん……!」
(え………?)
思わずその言葉に目を丸くする。
美依は真剣そのものの顔で、視線を絡めてきて。
何も言えずにいると、美依は震える声で言葉を続けた。
「私、やっぱり今夜だけなんて、無理だよ!」
「美依……」
「秀吉さんと一緒になりたい、他はどうなってもいい…だから…一緒に逃げよう、秀吉さん」
真剣な声色。
本心で言ってくれているのだと。
───心が、痛かった。
美依の額にコツンと額を合わせる。
そして、軋んだ心を隠し、笑って言った。
「そうだな……逃げようか」
「秀吉さんっ……!」
「お前、御館様はいいのか?」
「信長様には本当にごめんなさいとしか言えない。でも、私はやっぱり貴方が……好きだから」
駆け落ち。
それは、何度も何度も考えた。
お前を連れて、逃げてしまおうと。
でも―……
もう、遅い。
ここは『桃源郷』だ。
「解った、明日…空が霞む頃には逃げよう」
「……うんっ!」
「なぁ、もう一回お前を愛してもいいか?」
「へっ?!」
「せっかく気持ちが通じあったんだから、もっとお前を甘やかしたいんだ」
「……いいよ」
再度身体を重ね合わせて、美依を甘く啼かせる。
声も身体も体温も。
……心も。
俺が全て覚えておくから、安心して忘れてくれ。
部屋に響く声は甘ったるく……
何度抱いても、その熱が冷める事は無かった。
───………