〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第25章 白雪-sirayuki-《恋情編》❀真田幸村❀
『なんでっ…口づけなんてしたの……?!』
────あの時
美依は林檎みたいな顔で。
涙目になって、そう問いかけてきた。
答えなんて、簡単だった。
美依があんまりにも可愛く笑うから。
だから、俺は堪えきれなくなって……
その薄桃の、花びらみたいな唇を塞いだ。
でも、恥ずかしくてそんな事言えない。
だから、俺はとっさに嘘をついた。
『お前の唇が寒さで切れそうだったから、なんとなく』
まぁ、怒るのは当然だよな。
なんで、素直に言えないんだろう。
────お前の事が、大好きだと
たった一言、素直にそう言えていれば。
こんな、すれ違う事もなかったのに……
「美依さん、最近来ないね」
肌を切るような寒さの中。
市の片隅で、小さく店を広げる俺の傍で……
佐助が相変わらずの無表情で言った。
それを聞き、俺は小さくため息を付く。
来るわけない、だって。
「……俺の顔なんて、見たくねーだろ」
思わず、そんな本音を漏らすと。
佐助は表情が読めなくとも、なんとなく驚いたような顔になって……
俺に向き直るとボソッと、ちょっと呆れたように言ってきた。
「美依さんに何をしたの、幸村」
「別に何もしてねー」
「なら、なんであんなに楽しそうに、毎日幸村に会いに来ていた美依さんが、顔も見たくないなんて事になるのか」
「……」
そう言われ、俺は思わず口ごもる。
あれは、ちょっとした『事故』だった。
そう、あんなに自分に堪え性が無いなんて、思わなかったから。
だから……
つい『あんな事』をしてしまったのだけど。
「そう言えば、この前幸村、美依さんと神社に行ったよね」
佐助は考えるように顎に手を当てると、何か思い当たったように少し唸った。
俺は無視を決め込んだが……
それでも佐助は答えを探し当てるように、淡々と言葉を続ける。
「なるほど、そこで何かあったと」
「……」
「美依さんの可愛さのあまりに襲ったとか」
「あれは襲ったんじゃねー」
まさに売り言葉に買い言葉。
しまったと思った時には、佐助は珍しく驚いてこちらを覗き込んでいた。