〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第22章 艶熱蝶々-視線の鎖- ❀明智光秀❀
『味音痴』
これに対して、別に不便を感じた事は無い。
腹に入るものなんて、満腹になればそれでいいし、特に味なんて付いていなくても関係ない。
……と、少し前までは思っていた。
最近。
政宗が料理が上手い、舌が肥えていると言う点が、少し羨ましく思う。
それは俺の愛しい女を笑顔にするからだ。
『美味しい、ありがとう』
あの笑顔を、俺にも向けてほしい。
ふにゃふにゃと脳天気な笑顔。
でも、何よりも可愛らしい笑みで。
俺にも笑いかけてほしい。
そう思うのは『味音痴』の俺には無理だろうか。
普段、自分の欲を出したりしない俺だが。
『愛しい女』に関しては、強欲になるものだ。
そう、俺は惚れてる。
みっともない程、『あの小娘』に。
それは、抗いようのない、事実なのだから……
「まだ熱が高そうだな、美依」
真冬の安土城。
美依の部屋を訪れた俺は、褥に横たわる部屋の主人に、少し心配しながら声を掛けた。
美依は三日ほど前から、風邪で寝込んでいる。
ほぼ毎日、一回は顔を見に訪れるが……
今日も美依は林檎のような頬をして、浅い息を吐いていた。
(……まだ、だいぶ熱いな)
手を伸ばし、熱を測るように美依の額に手のひらを当てる。
すると、美依は小さくふふっと笑い。
少し目を細めながら、掠れた声を出した。
「光秀さんの手、冷たくて気持ちいいです」
「お前が熱いんだろう、汗は大分かいているな」
「きっともうすぐ下がります……よいしょっと」
「おい、起きて大丈夫か?」
手を退けると、美依が褥から起き上がったので、支えるように背中に手を当てる。
美依は『ありがとうございます』と赤い顔で微笑み。
熱い息を吐きながら、嬉しそうに言った。
「もうすぐ政宗が昼餉を運んでくれると思うので」
「政宗が?」
「はい、しょっちゅうご飯作って運んでくれるんですよ。とっても美味しいんですよ」
熱があると言うのに、嬉しそうな様子の美依。
そんな事をしてる間に、部屋の襖がガラッと開き…
噂の人物がひょっこり顔を出した。