〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第95章 花盗人と籠の白百合《後編》❀伊達政宗❀
「美依、新しい本持ってきたよ」
「わぁ…ありがとう、家康」
その日、新しい書簡を美依に届けに来た家康は、見る間に増える部屋の贈り物に小さく溜息をついた。
新しい着物も、良い香りの香も……
この子には一切通用しないのに。
だって、見ていれば解る。
信長様に気持ちが向く気配が微塵もない事。
(なんか…不毛って言うのかな、こーゆーの)
そんな事を考えながらも……
家康は美依が少し様子が変な事に鋭く気づき、美依の頬に手を当てて顔を覗き込んだ。
「美依…具合、悪い?」
「え?」
「少し気怠げに見えるけど……」
「そ、そんな事ないよ!」
(ん?なんだ、この反応……)
真っ赤に頬を染めて言葉を紡いだ美依を見て、家康は何か違和感を覚える。
美依はあまり表情がない。
だから、こんな『女っぽい』反応をした事は今までになかった。
どちらかと言うと、無垢で無邪気で。
そんな表情は見せた事はあるけれど……
でも、これはどうだ。
明らかにどこか『女』を匂わせている。
まさか、ついに信長様に落ちたか?
でも、そんな話は聞いていないし……
ぐるぐると考えていると、美依が真っ赤な顔をしながら少し斜めに俯き、何気なく髪を耳に掛けた。
だが、その瞬間。
(────え?)
その細い首に見えた『信じられないもの』に、家康は思わず目を見開いた。
「美依っ…それ、どうしたの?」
「え?」
「首、赤い痕がついてる」
「あ…虫にでも刺されたかな?」
トンチンカンな事を言う美依。
それにカッとなって、肩を掴み、瞳を睨みつけた。
そして、その何も解ってない顔に……
家康は凄むように、その存在を解らせる。
「どう見ても、それは口づけされた痕でしょ?!」
「───………っ!」
すると、美依は絶句して家康を振りほどき、首筋に手を当てた。
その困惑したような表情。
それを見て、直感的に感じ取った。
付けたのは、きっと信長様ではない。
じゃあ、誰か?と考えて。
────思いついたのは
たった一人しかいないのだ