〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第93章 花盗人と籠の白百合《前編》❀伊達政宗❀
────面白ぇな、コイツ
「まぁいいか、今日はこれで」
「え?」
「何でもない、こっちの話だ」
「貴方のお名前は?」
「俺は"独眼竜"だ」
「独眼竜、さん」
「さんなんて付けなくていい、敬語も要らない」
「独眼竜…でいいの?」
「ああ」
これが、俺と美依の出会いだった。
その夜、俺は美依とたわいない世間話をして、茶を飲んで過ごした。
話を聞けば聞くほど、美依は世間知らずで。
何も知らない、純粋無垢な女だと解った。
なんと言うか──……
とても穏やかで、優しい時間だった気がする。
泥棒をやって、物を盗んで。
それは世間からしたら、俺は悪者で。
でも、それは美依は知らないんだよなと。
それを思ったら、少しだけ心が安らいだ。
「また来てね、待ってるよ」
「ああ、約束する」
そして、明け方。
俺は美依と指切りをして、部屋から去った。
その夜、狙った宝物は手に入らなかったけれど。
俺的には、とても貴重な発見をしたと思い、心が弾んだ。
だがこの時、俺はまだ知らなかった。
美依がどういう境遇に置かれていて、
どんな思いで、日々を過ごしているのか。
そして──……
この出会いから、運命が大きく変わり出すことも。
ちょっと変わってるけど、可愛い女。
そんな程度の第一印象だった美依。
コイツが、俺に深く入り込んで来ようとは……
まだこの時。
俺は、露ほども思っていなかったのだ。
花盗人と籠の白百合《中編》に
続く──……