〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第88章 Dear…《後編》❀豊臣秀吉❀
『秀吉さん』
その無邪気な瞳が揺れていた
俺を呼ぶ声は澄んだ鈴の音のようで
その純粋過ぎる故の強さ
俺は何度もそれに救われていて
そんなお前に惹かれるのは当たり前だった
それは、妻になっても母になっても
ずっとずっと、変わらない
────お前が好きだ、美依
だから、汚させはしない
お前を、何者からも守ってやる
例え、心が離れてしまっていても──……
「怪しい男って言ってもな…」
屋台の主人が、困ったように眉をひそめる。
我ながら馬鹿な事を聞いているなと思いつつ、僅かな可能性に賭けて、俺は主人の返答を待った。
夏祭りが行われている神社。
そこは、それはそれは賑わっていて、夏の熱気と賑わう声で活気が溢れ返っていた。
林檎飴、射的、小物を売る店。
どこに行っても人、人、人の波。
こんな中で『怪しい人間』を探そうなんて、無謀な話だ。
それでも、もしかしたら誰かが美依を連れて行ったのを見ているかもしれない。
その可能性を信じ、ひたすら聞き込みをする。
男の特徴は解らない。
だが美依を連れているはずだから、美依の特徴を言えば、もしかしたら目撃している奴がいるかもと。
「具合の悪い小柄な女を連れているはずなんだ。浅葱色で、白い百合の柄の浴衣を着ている」
「女の特徴を言われてもな…男の特徴は」
「それが解らねぇ、だから探すのに苦労してるんだ」
「何かやらかした男かい」
「ああ、強姦魔だ」
「それは物騒な話だな……」
女物の小物売りのその主人は、顎に手を当て、首を捻った。
大体、見るからに『怪しい』なんて奴は、そう居るもんじゃない。
そーゆー奴に限って、案外普通だったりする。
だから、探すのが難しいのだ。
せめて何か特徴があれば良いのだが…
例えば武士っぽいとか、ただのゴロツキとか。
(こうしてる間にも美依は……)
変な焦りが生まれ、喉が乾いてくる。
早く見つけないと、さっき三成と政宗が言っていた話じゃ、女は気絶している所を発見されたらしいし…
何でもいいから手掛かりはないか。
俺は思わず、ぐっと汗ばむ拳を握った。
……と、その時だった。