〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第79章 鴇色の君に酔わされて❀豊臣秀吉❀
「光秀、だったら勝負だ!俺は絶対負けないからな!」
(ん?秀吉さん……?)
新年になり、それをお祝いする宴。
そんな中で、秀吉さんの声を聞き…
私は思わず、秀吉さんの席の方に振り返った。
見てみれば、怒った様子の秀吉さんと、不敵に笑う光秀さんがいがみ合い。
ただならぬ空気の中、女中さん達が二人の席に次々にお酒を運んで行っているのが解った。
「ね、政宗。秀吉さん達、どうしたの?」
と、秀吉さん達の席の方から政宗がこっちに来るので、私はそれを捕まえ理由を聞く。
すると、政宗はにやりと笑い…
とても可笑しそうに言葉を紡いだ。
「あの二人、飲み比べするんだと」
「え、秀吉さんと光秀さんが?!」
「おう、面白ぇことになった」
「光秀さんが勝つに決まってるじゃない、秀吉さんはお酒強くないのに!」
「だが秀吉の奴、本気だぞ?」
(こうしちゃいられない……!)
私は急いで立ち上がると、火花を散らす秀吉さんと光秀さんの元へと走った。
そして、タレ目を釣り上げる秀吉さんの側に座り、なだめるように言葉を紡ぐ。
「秀吉さん、飲み比べなんて無茶だよ!」
「美依…ここは譲れないんだ、悪いな」
「なんでそんな事になったの?!」
「それは、お前には言えない」
あくまでも睨む姿勢を崩さない秀吉さん。
一方…睨まれている光秀さんは、余裕な顔で。
胡座に頬杖をつき、その琥珀のような瞳を意地悪く細めながら…
まるで秀吉さんを煽るように、からかうような口振りで言った。
「秀吉、ここは素直に負けを認めろ。美依の前で無様な格好は見せたくないだろう?」
「うるさい、そんな姿にはならないから大丈夫だ」
「どっちみち負ける、さすれば約束は守ってもらうぞ、秀吉」
「うるせぇ、俺は負けねぇ!」
一触即発の雰囲気。
元々あまり仲良くない二人だけれど…
なんでこんな事になったんだろう?
次々にお酒が運ばれる中、ハラハラして交互に二人を見る。
周りには政宗、家康、三成君、信長様まで集まって、もはや飲み比べは宴を盛り上げる一興となってしまったようだった。