〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第1章 蜜毒パラドックス《前編》❀豊臣秀吉❀
その時。
大名がごくりと生唾を飲んだのが解った。
大名、掛かったな。
光秀はすっと立ち上がり、大名の肩に手を置く。
そして耳元で耳打ちするように……
小さな声で大名を『罠』にはめる。
「存じていますよ、貴方様の『性癖』を。他人の情事を盗み見るのは心が踊る……それは私も賛成です、轟殿」
「な、なんの事やら……」
「別に隠す事も無いでしょう……二人は広間の廊下を突き当たった角の部屋におります故、ご自由に」
───その時、一羽の烏が哭いた。
障子に映る二つの影は交じり合い、そして……
甘美な悲鳴は甘く切なく響き渡る。
それは『演技』か、それとも『真(まこと)』か。
考える暇もなく、蜜時に溺れていく。
「ぁっ…秀吉、さ……ぁあっ!」
「んっっ……美依…………!」
罠に嵌めるは、小さな鼠。
蜜毒に冒され、匂いに釣られて、やってくる。
さぁ、猫を放って、捕まえましょう。
そして溺れるは蜜月の晩。
蜂蜜色の満月が、仄かに照らす
影は映りて全てを暴く────…………
蜜毒パラドックス〖前編〗 終
蜜毒パラドックス〖後編〗に続く───…………