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異世界人の平凡な日常【涼宮ハルヒの憂鬱】

第5章 ◇誰も知らない、世界が壊れた日◇




「古泉くん、ごめんなさい。
 本当に、ごめん。ありがとう」

「…ススキさん…」


そのとき。

私は。

目に映った光景に。










世 界 が 壊 れ た 

と 思 っ た










少しかがんだ体勢のキョンちゃんと、重なるひとつの小柄な影。
いや。重なりにいったのは、キョンちゃんの方だった。
どうしてそうなったかなんて、どういう状況だったのかなんて。
もともと音も声も聞こえていなかったから、そんなのわからない。

ただ、はっきりと、わかっていることは。
キョンちゃんが涼宮さんに、キス、したということ。

嫌なのに、目を逸らすこともできず呆然としたまま。
脳裏に焼きつくほど、じっとそれを見ていた。
私の反応が消えたからか、古泉くんの焦った声が聞こえたような気がしたけれど。
返事をする余裕なんてなくて。
映像から眩しいほどの光が放たれて、キョンちゃんたちの姿が見えなくなるまでずっとずっと、そこに立ち尽くしていた。





やがて、自分のいる空間にも光が入ってきて。


パキィィン…!!


ガラスでも割れたような、甲高い、脆い、音が…どこかで聞こえた気がした。




















「っ!?……………いま、の………ゆ、め…?」


酷い、夢だった。

夢……夢であってほしい、夢にしてほしい…でも。

おかしなことに、感じるのだ。


「…ふっ……う………嫌だよ……助けて、苦しいよ……うぅ………」


あれは夢なんかじゃなくて、現実にあったことなんだ…と。


「 キョンちゃん 」


ぽつりと呟いた名前は、長い時間ずっと叫び続けたように、酷く掠れていて。
他の誰に聞かれることもなく、静かに、静かに。
留まることなく、溢れだす涙とともに。


―――消えた。


この日、私の中にあるひとつの世界が、壊れた。

(キョンちゃん、キョンちゃん、怖いよ助けて、今すぐ会いたいよ。会って確かめたい、ねえ、あれは夢でしょう。そうだと言って、お願い。今なら大丈夫、まだ騙せるの。でも明日になったら、もう……………キョンちゃん)



 ◇◆ E N D ◆◇

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