第1章 ◇ワッチュアネイム?◇
いったい、まったく、どうしてこういうことになったんだかわからないけど。本来ならば二十ウン歳な私は今、二度目の高校生活を送っていたりする。
しかもどうやら世界まで違っているらしく…というのも、高校の入学式でうっかり足をすべらせたあげく、後ろへ倒れこむときに私が巻き込んでしまった人物が、どうやら私の知る現実では存在する筈のない人間であったからだ。
はじめこそ嘘だまさかこんなことある筈がない、いやいやそれよりどう接すればいいんだ!?
―――なんて悩んだものだが、よくよく考えてみれば私はその現実にいる筈のない人物のことも、その人を取り巻く環境なども詳しくどころか大雑把にさえ知らなかった。
ただ顔を知っていたというだけならば、街中ですれ違った通行人Aと何ら変わりない。つまり、小難しい問題など欠片たりとも私は持ち合わせていなかったワケで。
現在、同じクラスの二回連続で私の後ろの席にいる彼とは、なかなか友好的な関係をちゃくちゃくと築いてきている。
「ねえねえ、キョンちゃん」
「……ススキ。ちゃん付けはやめてくれ」
「ねえ、キョンたん」
「他の呼び方はないのか」
「じゃあ…キョン吉?キョン助?キョンちゅん?キョン様?」
「それ以外に選択の余地はないのか、どう考えてもオカシイだろう。ちゅんって何だよちゅんって?ちゃん付けの方がまだマトモだ」
「ありゃ、そう。では、キョンちゃん」
「……なんだ?」
「私ね、実は異世界人なんだよ」
「…………はあ!?」
「って、言ったらどうする?」
「……なんだ、冗談か。そりゃそうだよな……ってもしかして、ススキも涼宮ハルヒと同じく、宇宙人とか超能力者とか異世界人だとかに興味があったりするのか?」
「いや、それほどない」
「少しはあるのか」
「誰でもちょっぴりくらいは興味あるんじゃないの?」
「まあ、一概にそうとは言いきれないが否定もできんな。しかし、それならさっきの質問の意図はいったい何なんだ」