第10章 帆風
朝食が終わってから、練習が始まるまでの時間はそんなに長くない。
山口君から指定された場所にパタパタと走っていくと、壁にもたれていた山口君がこちらに手を振った。
「ごめん。待たせたよね?」
「大丈夫。朝食の片付けとか…大変な時間にごめんね。ってか、俺たちが2人っての…珍しいね。」
「うん。小学校から一緒なのにね!いつもは蛍も居て3人だもんね!」
「それ…だけどさ、ワザとだよ。俺が皐月さんと2人きりにならないようにしてるの…。小学校の時からそうならないように気を付けてる。」
え…。
私って…山口君に避けられてるの…。
全く気付かなかった…。
「あっ、違うよ!別に皐月さんと2人が嫌ってわけじゃないよ!嫌だったら今呼び出したりしないでしょ?」
突然の山口君の発言に固まっていると、山口君が慌てた様子で言った。
「う…ん。」
「俺が言いたいのはさ…、俺と皐月さんが2人っきりになると、ツッキーが不機嫌になるんだよ。」
「え!?なんで?」
「でしょ?俺もそう思うよ。俺と皐月さんに何かあるはずないから、ヤキモチなんて妬く必要ないって。でもさ…ツッキーは昔から皐月さんと2人きりになる男が居たら、相手が誰だってもれなく不機嫌になってたよ。」
「そんなの…」
全然気付きもしなかった。