第10章 帆風
「あれ?和奏ちゃん、もう起きてるの?」
隣の布団から潔子先輩がゴロンとこちらに話し掛けてくる。
こんなシーンを田中先輩か、西谷先輩が見たら感動し過ぎて泣いてしまうのではないかと思うくらい朝からお美しい。
「潔子先輩、おはようございます。私、起こしちゃいましたか?すいません。」
「ううん。自分で起きたの。」
布団の上に座り、んーっと伸びをする潔子先輩。
…その色気はどうやったら身につくんですか…?
「私も何だか早く目が覚めちゃって。」
え…寝癖ついてますか??
そう思うくらい潔子先輩がこちらをジーっと見てくる。
「何か、今日の和奏ちゃん…昨日より元気に見える。いい事があったのね。」
え…。
だって…そんなはず…。
思わず自分の顔をペタペタと触ると、潔子先輩がふふふと笑っている。
その優しい顔を見ると、潔子先輩はきっと蛍と仲直りしたんだと思っている事がわかる。
ズシ…っと心が重くなるのを感じる。
「俺はツッキーと違って、和奏の気持ち全部受け止めてやれる。今の悲しみも…。」
こんな時に思い出すのが木兎さんの言葉だなんて…。
誘拐された人は、他に頼る人が居なくて、最後は自分を誘拐した犯人を信頼するようになる…なんて話聞いた事があるけど…そんな感じだろうか?
私は別に誘拐されたわけではないけど…。