第10章 帆風
少し早く目が覚めて、暗がりの布団の中で携帯を開く。
私、何やってるんだろう…。
ため息をつく回数が増えてる。
期待していた蛍からのメッセージはない。
蛍が頭を冷やそうと言うのだから、本当に頭が冷えるまで距離を置くのかもしれない。
仕方なく、代わりに昨日新たに加わった名前をタップしてメッセージを開く。
[木兎 光太郎]
[明日の夜和奏に会えるの楽しみ過ぎて、こんな時間まで寝れないんだけど…そろそろ寝ないと。和奏、好きだぞ。]
例えば…彼氏から届いたんであれば文句なしのメッセージを複雑な心境で見つめる。
これ…浮気…だよね。
悪い事をしている自覚はある。
蛍に悪いから…すぐにやめないと。
でも…木兎さんが居ないと…寂しくて仕方がない。
現に木兎さんからのこのメッセージが無ければ、寝起きから空っぽのメッセージボックスに絶望していたかもしれない。
もう一度、木兎さんからのメッセージを読み返した。
削除するかどうか、悩んだけど、
あとで時間のある時に整理すれば…そう自分に言い聞かせて携帯を閉じた。
その時に、自分が木兎さんからのメッセージをどれだけ嬉しいと思っているのか、初めて気付いた。