第9章 波風
「あっ…あの、月島君!しゅ…首尾はいかがでしたか?」
体育館に足を踏み入れるなり、谷地さんが駆け寄ってくる。
首尾って…。
「最悪だよ。これ以上余計な事しないでくれる?」
ひっ…っと谷地さんが息を詰める瞬間に、まずいと思った。
どうやら、先程からの勢いで、つい本音がそのまま出てしまった。
「も…申し訳ありまぜん。私のせいで…。和奏ぢゃん、心配していたのに、私が余計なごどを言っだせいで…。」
ポロポロと涙を流す谷地さん。
「おいおい、ツッキー。皐月さん以外の女の子も泣かせてんのかよ。」
一番近くにいた音駒の集団の中から、黒尾さんがスポーツタオルを投げて渡してくる。
「八つ当たりはその辺にしとかないと、みっともないですよー。」
言い返す言葉も無いので、タオルを受け取り会釈だけ返す。
他の学校の人達もざわざわとこちらを見ているし、烏野の様子を見れば、大騒ぎになっている。
「キャプテン!!月島が!月島が!谷地さんを泣かせました!」
「あー、月島、ゴラァ。谷っちゃん泣かせるたぁ何事だ!ゴラァ!」
「ツッキー!?谷地さん!?え!?なんで!?大丈夫!?ツッキー!?」
本当に…勘弁してほしい。
黒尾さんから受け取ったタオルを見れば、まだ使用されてない綺麗なタオルだったので、谷地さんに手渡す。
「君に泣かれると困るんだけど…。」
「ご迷惑ばがりおかけして…ずいまぜん。」
タオルで顔をゴシゴシしているけど、泣き止む様子のない谷地さんを体育館の外へと連れて行く。
和奏が居るのとは別の出口。
流石に泣いてる谷地さんを連れてる所を見つかれば、もっと関係が悪化するのは僕にもわかる。