第9章 波風
「だいたい…僕が他の女の子に優しくした?だから何?告白を断ってたのは、和奏だって知ってたんでしょ?僕は他の女の子をフッてるだけで責められてさ…。和奏自身は周りの男達にニコニコして…無自覚なのもいい加減にしなよ。」
気が付いたら一気にまくし立てていた。
すぐに言い過ぎだと気付いたけど、僕が謝るより先に、怒った顔した和奏が喋り始めた。
「本気で言ってるの?私が他の人に愛想振りまいてる?そんな気ないのは蛍だってわかってるでしょ?それに、私がヤキモチ妬いてるの知ってて他の子に優しくするなんて…悪趣味。」
和奏は本当に何もわかってない。
いつもそうだ。
僕が和奏の為にと思った努力はいつも和奏に伝わらない。
「僕が妬いてるのを知ってるのに、王様と2人でいる方が何倍も悪趣味だと思うけど?それとも楽しんでるの?木兎さんにまで言い寄られて…僕にヤキモチ妬かせて楽しい?」
売り言葉に買い言葉。
こんなに喧嘩、小学生みたいだってわかってるのに。
口から一度出てしまった言葉は取り消せない。
「そんな…わけない。木兎さんだっていつもの冗談だって蛍だってわかってるくせに。」
そういう所だよ。
そうやって、無防備で、人を疑わないところが心配なんだよ…。
なんで…わからないかな?
「和奏だって、木兎さんが冗談じゃないことくらい気付いてると思ってたけど…。ねぇ、この話し合い…きっと平行線のままだよ…。僕達、少し時間が必要なんじゃないかな?少し頭冷やそう…お互いに。」
さっきから何だか悲しい気持ちで…とにかくこの不毛な言い合いを終わりたい。
「そう…だね。お互い少し冷静になった方がいいね。」
和奏が泣きそうなのは気付いていたけど、1人残して体育館へ戻る。
この状況で慰めてあげれる程器用じゃない。
僕が居たってもっと泣かせるだけでしょ。
ってか…僕だって泣きそうなんだけど…。