第9章 波風
「僕も…話さないといけないと思ってた。」
酷い事してごめんって言いたかったんだ。
和奏も、王様と2人きりで居た事、ちゃんと謝れば今回は許してあげる。
だから…。
僕が口を開こうとしたのと同時に、和奏が話し始めた。
「あのね…蛍は影山君の事を心配してるのかもしれないけど…影山君とは何もないの!」
「何も?」
いや…何もないのは…僕と付き合ってるんだから、当たり前でしょ。
もし、王様とキスでもしてたら…って、考えただけで殺したくなってきた。
しかも、昔付き合ってて…今も和奏の事好きって時点で何もないとは言わない。
「そう!何も。ただの選手とマネージャーだよ。だから、心配しないで欲しい。それにね…私もきっと余計な心配してて…蛍が他の女の子に告白されてるのが…心配で…。断ってるのは知ってるんだけどね…。」
王様との事…全然納得出来てないんだけど…。
しかも、一緒にいた事は謝る気もないって事?
選手とマネージャーだから、今後も気にするなって?
しかも、僕への告白の話だって…僕が今朝までかけて想定してたのとはちょっと違う。
断ってるのは知ってるなら…何の心配もないでしょ?
「断ってるのは知ってて…何が心配だったの?」
うっ…っと少し間があいて、和奏が答えづらそうに顔を伏せる。
「それ…は、蛍が他の女の子達に優しくしてるって…。」
「それが嫌なら僕に言えばいいのに。」
断ってる事まで知ってて、それでも心配って…そんなに僕の事信用出来ないの?
「だって…そんな事でいちいちヤキモチ妬いてるって思われたくなかった。」
「ヤキモチ妬かれる事と、和奏が王様に相談する事…僕がどっちが嫌か…考えなくてもわかるでしょ?」
何で…そんなに驚いた顔してるのさ。
自分は好意を向けてる相手とは選手とマネージャーだから、2人で居ても気にしないで?
それで、僕には女子と喋るなって…?
だいたい、僕だって他の女子と喋るのなんて面倒で仕方がないんだ。
でも…和奏の為だから…って…。
それなのに…。