第2章 軽風
合宿に出発するのは翌日の夜中だったので、夕方までのんびりと和奏の家で過ごした。
こうやって家で2人で過ごす時間は擬似結婚生活のようで、僕の不安をゆっくり溶かしていくように温かい。
「あれ?もう行くの?家に荷物取りに戻るにしても早すぎない?」
断腸の思いで…切り上げた温かな時間を和奏が無自覚にも繋ぎ止めようとする。
僕だって出来る事ならギリギリまで和奏とイチャイチャしていたいに決まっている。
ただでさえ、これから合宿で人目を気にしないといけなくなるのだから。
「あーうん。ちょっと寄るところがあるんだ。だから、集合時間前にまた迎えに来るよ。」
「え?じゃあ、蛍はそのまま学校行きなよ!仁花ちゃんが1人で危ないだろうし、連絡してみて一緒に行くから。」
「いや…でも、時間も遅いし…。」
仁花ちゃんが…って、自分が危ない自覚はないのだろうか。
「でも、蛍がいると仁花ちゃん、怖がっちゃうから。」
酷い言われようだ。
別に和奏以外の女子から何と思われようと興味ないから…確かに谷地さんからは怖がられている自覚はあるけどさ。
「わかった…。もし、谷地さん捕まらなかったら、絶対に連絡して。その時は迎えに来るから。」
「うん。ありがとう、蛍。後でね!」
そうして、和奏の家を後にした。