第2章 軽風
最近、小さな不満がある。
本人には、色々な方法で再三伝えているが、
一向に改善される様子がない。
和奏が無意識にモテまくる事だ。
いや、和奏がモテるのは元からなんだけどさ…、
僕と付き合ってる自覚とかちゃんとあるのだろうか。
「ねぇ、美味しい?」
和奏がひょこっと僕を覗き込んだ。
こういう所から、和奏は自覚が足りない。
自分が可愛い自覚だ。
こんなアングルで覗き込まれたら、他の男達が思わず襲い掛かるかもしれない。
夕食に和奏が作ってくれたチキンソテーの…なんとかソースを見る。
「うん。普通に美味しい。」
普通に美味しいって何だ…って、ほっぺを膨らます様子がまた可愛くて、こんなの他の奴には絶対に見せたくない。
特に王様だ。
一時とは言え、2人は付き合ってたし、
明言はしないが、2人には身体の関係もあった事は明白だ。
本当であれば、和奏と王様には一言も言葉を交わして欲しくない。
けど、マネージャーとして一生懸命頑張ってくれてる和奏に、そんな子供みたいなヤキモチ伝えられるはずもない。
でも…今日のは…嫌だな。
今日の部活中に王様が和奏にテーピングを頼んでいたのを思い出す。
和奏の魅力なんて、僕だけ知っていれば十分なのに。
僕が彼氏なんだから、そんな事にいちいち慌てる必要はないって思うけど、
前に幼馴染って事にあぐらをかいているうちに、和奏が王様と付き合ってしまった記憶が拭えない。
和奏の前だと余裕が無くなる。