第8章 玉風
怖い顔して座る俺を見下ろして居たのは、烏野のセッター君だった。
「何…してたんすか?」
こんな奥まった所まで用事もなく来るとは思えないから、和奏を探しに来たのだろうけど…。
「え?覗き見してたんじゃないのー?見たまんまだよ?」
「だから、あいつの事抱き締めて何してたのかって聞いてるんです!」
あっ、結構本気で怒ってるやつね。
別れたと言っても、まだ和奏の事が好きなのだろう。
ってか、そうじゃないとわざわざ探しになど来ないか。
「ちょっと落ち着きなよ、セッター君。」
「影山…です。」
俺の呼び方が気にくわないのか…なかなか生意気な態度で嫌いじゃない。
「影山君ね。影山君はさ…和奏が嫌がってるように見えた?」
「それは…。」
正直、どこから見てたかにもよるけど、言葉を詰まらせている様子を見た限り、序盤の無理矢理感溢れるやり取りは見ていないんだろう。
俺には好都合だ。
「和奏の事狙ってるのは影山君だけじゃないんだよねー。和奏もさ、ツッキーや影山君達との幼稚なやり取りに疲れて、俺みたいな包容力溢れるタイプが気になってんじゃない?」
なんてのは、俺の勝手な願望。
でも、影山君には効いてるのか、何も言えずに怖い顔で黙り込んでいる。
「それにさ…影山君は今は和奏の彼氏でもない訳だし…文句言うなら筋違いだよ?羨ましかったのなら、自分もやれば?和奏に拒否られない自信があるならだけど。」